頭を触っていて、不思議と効く場所がある。黒目と耳の穴をそれぞれ上に伸ばした線が交わるあたり。そこに左右ひとつずつあるのが、いわゆる頭部第二と呼ばれる調整点だ。何か特別なツボのように感じるかもしれないけれど、触れてみると単なる頭皮の一部でしかない。だけど身体というのは面白いもので、ここにほんの少し刺激を与えるだけで首や肩の力がふっと抜けることがある。
首がつらい人は大抵、首そのものを一生懸命ほぐしてきた経験がある。マッサージに行っても、整骨院に行っても、とにかく首や肩を直接ゴリゴリされる。でもそれで楽になる人もいれば、余計に硬くなってしまう人もいる。僕自身もそうだった。首を触られれば触られるほどガチガチになって、呼吸も浅くなる。そこで気づいたのが「首は首で治さない」という考え方だ。大胸筋や腕から首が軽くなることもあれば、腹部を整えた途端に首が回ることもある。そして頭の上にある頭部第二も、そのひとつの入り口になる。
この点に軽く触れると、自律神経の切り替えが起きやすくなる。のぼせて頭が熱いときは熱が下り、逆に冷えてぼんやりしているときは頭に温かみが戻る。呼吸が深くなり、夜眠りやすくなる人も少なくない。実際に施術中、ここに指を置いた途端に目がトロンとして呼吸が整い始める場面を何度も見てきた。首や肩の力みだけではなく、心の緊張までゆるんでいくように感じる。
さらに不思議なのはお腹の変化だ。頭をちょっと触っただけなのに、臍の横の硬さがスッと消えることがある。腹直筋の緊張が抜けて、内臓の動きが良くなるのか、便通が楽になったり、胃の重さがなくなったと言われることもある。理屈だけで説明するのは難しいが、身体のつながりはそういうものだと思う。首こりや肩こりに悩んでいる人の多くは、自律神経のアンバランスや消化の不調も抱えている。頭部第二を介して両方にアプローチできるのは、この整体ならではの面白さだ。
もちろん魔法のスイッチではない。強く押せば逆に頭が重くなったり、めまいが出ることもある。だから本当に軽く、呼吸を待ちながら触れるくらいで十分。大事なのは「ここを押せば治る」という発想ではなく、「からだ全体が整うための入り口」として扱うこと。首を触らないで首が楽になる、そんな経験を一度でもすると、身体の見方そのものが変わってくる。
僕が伝えたいのは、首がつらいときに首ばかり責めないでほしいということだ。首は結果として固まっているにすぎない。原因は腕かもしれないし、胸かもしれないし、腹や足首かもしれない。頭の上にある調整点もまた、その原因をほどく鍵になる。施術中に「なんで頭を触ってるのに首が軽くなるんですか?」と聞かれることがあるけれど、それが整体の醍醐味だと答えるしかない。人間の身体は首だけで生きているわけじゃないから、首の苦しさを解く道もひとつじゃない。
首や肩を一生懸命ほぐしてきても改善しなかった人へ。次は、頭の上からアプローチしてみるといい。ほんの一呼吸分、そっと触れるだけで、からだ全体が「整列モード」に切り替わる。その瞬間の軽さは、体験した人にしか分からない。