僕の好きな漫画に、範馬勇次郎の言葉がある。
『毒も喰らう、栄養も喰らう』
乱暴な言葉に聞こえるかもしれないが、整体的に見ると、これはかなり大事なことを言っているように思う。
僕の行っている整体の方針も、少しそこに近い。
『酒なんか毎日飲んでんじゃねえ』と、頭ごなしに言いたいわけではない。
もちろん、飲みすぎが身体に負担をかけることはある。
食べすぎも同じだ。
添加物だろうが、酒だろうが、甘いものだろうが、身体に入れば何かしら処理しなければならない。
ただ、自分が目指しているのは、ただ悪いものを避け続ける身体ではない。
身体にとって負担になるものが入ったとしても、それを必要以上に怖がらず、自分の身体でこなし、余分なものは排出できる。
飲みすぎた時には、身体がちゃんと嫌がる。
食べすぎた時には、もう十分だと分かる。
惰性で続けるのではなく、自分の身体で止めどころを感じ取れる。
そういう身体を作りたいのだ。
一般的な健康論では、身体に悪いものを避けましょう、という話になりやすい。
それも間違いではない。
実際、身体が弱っている時に余計なものを入れれば、負担は増える。
ただ、あれもダメ、これもダメ、これを食べたら終わり、これを飲んだら悪い、という方向に行きすぎると、今度は身体への信頼がなくなっていく。
身体を守っているつもりで、だんだん怖がりな身体になってしまうことがある。
大事なのは、何でも無制限に入れることではない。
毒も栄養も、身体で受け止められるかどうか。
そして、要らないものをちゃんと出せるかどうか。
そこなのだと思う。
人に『飲みすぎではないか?』と言われて酒をやめようとしても、だいたい反発が出る。
人間は、外から止められると余計にやりたくなる。
本当に面倒な仕様である。
だから、外から禁止されるより、自分の身体で分かる方がいい。
今日はもういらない。
今は飲まない方がいい。
これは美味しく感じない。
そういう判断が、頭ではなく身体から出てくることが大事だと思う。
人間としての本能的な力を、ちゃんと発揮できる身体。
入ってきたものをこなし、余分なものを出し、必要なものは血肉に変える身体。
何があっても、自分の身体を信じられる状態。
自分は、そういう身体を作りたいと思っている。
だから、『整体ってどんなことをするんですか?』と聞かれると、返答に困ることがある。
世間的な説明に合わせるなら、肩こりを楽にします、腰痛を見ます、骨盤を整えます、という話になる。
もちろん、それもする。
ただ、本当に見たいのはそこだけではない。
自分の身体が、今どこまで受け入れられるのか。
何が必要で、何がもう余分なのか。
どこで止めればいいのか。
どこまでなら楽しんでいいのか。
そういう判断ができる身体に近づけていくこと。
そこも整体の大事なところだと思っている。
『整体を受けると、毎日美味しいお酒が飲めるようになりますよ』と言ってしまうと、まるで飲んだくれ製造機屋さんである。
そうではない。
大事なのは、飲める身体ではなく、飲むか飲まないかを自分の身体で分かることだ。
食べる時は食べる。
飲む時は飲む。
けれど、もう十分だと身体が言ったら止められる。
毒も栄養も、怖がるのではなく、身体で受け止める。
要らないものは出す。
必要なものは血肉に変える。
自分の身体を信じられるというのは、そういうことなのだと思う。