からだが「祝祭モード」に入るとき
風邪をひくと、多くの人は
「早く治したい」「仕事を休めない」
と、マイナスにとらえがちです。
でも、からだの側から見ると、風邪は“壊れた”サインではありません。
日常をジャマする厄介者でもありません。
風邪は、からだが自分で整え直そうとしている「ハレの日」です。
普段の「ケ」の生活ではできなかった調整を、一気に進めるための特別な時間。
本来は「有難いこと」として受け取っていい出来事です。
整体の世界では、日常を「ケ」、特別な場や祭りを「ハレ」といいます。
風邪や体調不良は、からだにとっての祝祭として現れます。
風邪でからだがやっていること
風邪のとき、からだの中ではこんなことが起きています。
● 溜めこんだ疲労を、熱で一気に燃やす
● 固まった呼吸や胸の動きを、咳や痰・鼻水で調整しなおす
● 緊張続きだった自律神経を、強制的に「休む側」に切り替える
● 姿勢や動き方のクセを、一度崩してから整え直す
風邪のあとに
・からだが軽い
・よく眠れる
・肩や首の張り方が変わった
と感じる人が多いのは、この“大掃除”が終わったあとの状態だからです。
現代人は「目と頭」から風邪をひく
今の時代の風邪で特徴的なのが、
目の疲れと頭の疲労がセットになっていることです。
・スマホやパソコンを長時間見る
・細かい文字やSNSを追い続ける
・休憩中も画面を見てしまう
こうした生活が続くと、目の奥からおでこ、こめかみ、後頭部までがじわじわ緊張していきます。
目の疲れが強い人は、背中の上のほう(特に胸椎1〜3番あたり)が硬くなり、
呼吸が浅くなりやすいのが特徴です。
・息が入ってこない
・寝ても頭がスッキリしない
・風邪をひくとまず喉・鼻・目に来る
こういう方は、「目と頭の使いすぎ」がスタートになって風邪に入っていくことが多いです。
蒸しタオルで「目から呼吸器を広げる」
そこで役に立つのが、目への蒸しタオルです。
目に熱を入れることで、実際には「呼吸の入り口」全体がゆるみます。
・目の奥
・おでこ
・鼻の奥
・喉の手前
このあたりは、呼吸器と自律神経の“玄関口”のような場所です。
ここが固いままだと、どれだけ胸を広げようとしても、呼吸が深まりきりません。
目に蒸しタオルを当てると
・まぶたが重くなる
・自然と呼吸が深くなる
・首や肩の力が抜けやすくなる
といった変化が起こります。
風邪の最中や、風邪の手前で「なんとなく頭が重い・目がしんどい」時には、とても相性のいいケアです。
蒸しタオルの簡単なやり方
家でできるやり方をシンプルにまとめておきます。
フェイスタオルを水で濡らして絞る
電子レンジで30秒〜1分ほど温める
(熱すぎるときは、少し振って冷ます)
横になり、たたんだタオルを「目〜おでこ」全体に乗せる
3〜5分ほど、じっとして呼吸だけ感じる
ポイント
・「気持ちいいけど少し熱い」くらいを目安にする
・直接まぶたが熱すぎるときは、薄手のハンカチを1枚重ねる
・皮膚が弱い人や、強い充血があるときは無理をしない
風邪のときは、これに膝湯や足湯をプラスすると、
目の奥と胸・骨盤まわりが一緒にゆるんでいく感覚が出やすくなります。
ハレとケで見る「風邪」という祝祭
整体でいう「ケ」は、いつもの日常です。
仕事、家事、育児、スマホ、移動。
からだは黙ってそれについていっています。
そこに、風邪や体調不良という形で「ハレ」がやってきます。
・いつものように動けない
・予定どおりに進まない
・横にならざるをえない
これは、からだが勝手にサボっているのではなく、
「一度ここで祝祭をやらせてくれ」
「溜まっているものを出し切る時間が必要だ」
というサインです。
ハレの日の役割は、日常をリセットして整え直すこと。
風邪や体調不良も同じで、からだの中で静かな“祭り”が起きています。
・熱で古い疲労を燃やし
・咳や鼻水で余分なものを外に出し
・目や頭の緊張をほどき
・呼吸と姿勢のリズムを整え直す
これが終わると、からだは前より少し、本来の自分に近い状態に戻っていきます。
風邪のときに、からだにしてあげたいこと
風邪を「祝祭」として受け取るなら、やることはシンプルです。
・無理に動かない
・しっかり横になる
・食べすぎない(消化にエネルギーを取らせない)
・あたたかい湯(膝湯・足湯など)で要所を温める
・目の蒸しタオルで、頭と呼吸の入り口をゆるめる
風邪を「敵」として叩きつぶすよりも、
からだがやっている調整を手伝ってあげる。
そのほうが、結果として回復も早くなります。
おわりに
風邪や体調不良は、サボりでも失敗でもありません。
日常のケを一度止めて、からだがハレの日として祝祭を開いている状態です。
その時間にきちんと身をゆだねて、
・目と頭を休める
・呼吸の入り口をあたためる
・よく眠る
そんな過ごし方ができたとき、
「風邪をひいてしまった」ではなく
「からだが整うチャンスをくれた」と感じられるようになります。
風邪は邪魔なだけの存在ではなく、
本来は有難い働きをしてくれている、からだからの贈り物です。
