「予定日を過ぎたんですが、どうにかなりませんか?」
と相談を受けることがある。
というか、最初から僕のところに来られることはあまりない。
病院へ行き、自分でもいろいろな体操を試し、それでも動きがなくて最後にうちへ来る。
僕の返答は、
『なんとかします』
だ。
返事をしたはいいものの、正直冷や汗をかく。
予定日を過ぎている。
本人も焦っている。
病院からも今後の話をされている。
実際、出産には母子の安全がかかっている。
こちらはこちらで『なんとかします』と言った手前、整体師としての命運も少しかかっている。
正直、簡単ではない。
こちらにも鬼気迫るものがある。
ただ、それをそのまま出して施術をすると、相手まで緊張してしまう。
だから押さえ込む。
こちらは穏やかに静かにしていた方が、相手の身体は緩む。
とはいえ、その時の僕の中の気合いは、
『気合いだけで人が本当に殺せるんじゃないか』
と思うくらい入っている。
帝王切開そのものを否定する気はない。
必要だから行われるものだ。
ただ、産後の身体を観ていると、帝王切開を経験した方には独特の身体の残り方を感じることがある。
腹部の硬さや骨盤の偏り、腰や股関節の使い方。
そういうものが残ったまま年を重ね、後になって腰痛や膝痛として出てくることがあると僕は観ている。
特にそういう膝痛は、膝だけを調整していてもなかなか変わらない。
だから可能なら、その前に出来ることはしておきたいと思っている。
予定日を過ぎた妊婦さんにするのは、無理に陣痛を起こすようなことではない。
まず身体の緊張を取る。
特にアキレス腱をよく観る。
ただ伸ばせばいいというものではない。
骨盤や仙骨まで響くように伸ばしていく。
アキレス腱は目の緊張とも連動すると僕は観ているので、お母さんには蒸しタオルを目に当ててもらうことも強く勧める。
目が緩む。
アキレス腱が緩む。
仙骨や骨盤も動きやすくなる。
そうやって、出産の邪魔をしている緊張を取っていく。
ただ、予定日を過ぎたからといって、こちらが出産日を決めることは出来ない。
身体を観ていて、
『まだ今日じゃないな』
と思うこともある。
そういう時には、病院で母子の状態を確認してもらいながら、もう少し待ってほしいとお願いすることもある。
赤ちゃんにも赤ちゃんの都合がある。
人間側が予定日を決めたからといって、本人が従うとは限らない。
これまで観てきた中では、身体が出産へ向かっている時に緊張を取ると、その日のうちや翌日に出産になったことも多い。
ただ、僕が産ませたという話ではない。
もう産まれる身体だったところに、余計な緊張が残っていただけなのだと思っている。
とはいえ、
「予定日を過ぎました。なんとかしてください」
という鬼気迫るタイミングになってからより、もっと前から身体を観せてもらった方がいい。
目を緩める。
アキレス腱を緩める。
仙骨や骨盤が動きやすい身体にしておく。
その方が、こっちも冷や汗をかかなくて済む。