口や胃は、食べ物をただ放り込むための入れ物ではない。
何を食べると心地よいのか。
今の身体は、何を必要としているのか。
それを見て、感じることを、整体では大切にしている。
『肝臓に負担がかかっているのではないか?』
と聞くと、
「最近、オレンジが食べたくてしょうがない。」
という方がいた。
また別の方からは、
「玉子を剥いた後、その殻まで食べたくなる。」
という話を聞いた。
東洋医学では、酸味は肝と関係するものとされている。
玉子の殻には、カルシウムが多く含まれている。
だからといって、それだけで身体の状態を決めつけることはできない。
ただ、身体が何かを選ぼうとしていることはある。
身体に必要なものを食べると、不思議と美味しく感じる。
口に入れた瞬間だけではない。
食べた後、身体が軽い。
妙に落ち着く。
もう少し食べたいと思っていたのに、自然と箸が止まることもある。
ただ腹を満たすために、物を詰め込んでいては分からない。
漫然と、漠然と、ただ口へ運んでいるだけでは、身体が何を感じているのかも見えなくなる。
僕の好きな漫画のキャラクター、範馬勇次郎は、
「漫然と口に物を運ぶな。」
と言った。
何を前にしているのか。
何を食べているのか。
それを意識することは、食べる側に課せられた責任なのだという。
身体に悪いとされるものを、すべて避ければいいわけではない。
だからといって、あえて毒を喰らえという話でもない。
生きていれば、身体に負担のかかるものを完全に避けることはできない。
保存料や着色料の入ったものを口にすることもある。
酒を飲むこともあれば、脂っこいものを食べることもある。
健康にいいとされるものだけを選び続ける生活も、どこか不自然だ。
多少乱れたものを食べても、身体が受け止め、こなし、何事もなかったように次へ進める。
食べるたびに崩れるのではなく、入ってきたものを自分の身体で始末できる。
そういう身体をつくることが、整体でいう本当の健康なのだと思う。
何を食べたのか。
食べた時に、どう感じたのか。
食べた後、身体はどうなったのか。
そこを観ずに、ただ口へ物を運ぶ。
それでは、胃に荷物を積んでいるだけだ。
口も胃も、投入口ではない。
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