最近、親指への負担が大きい。
痛いわけではない。ただ、忙しくなって施術の人数が増えると、以前より親指を使っている感じがある。
施術では親指を使う。身体を押すためだけではなく、硬さや弾力、わずかな違いを観るためにも使う。
整体師にとって、親指はずいぶん働き者である。
働き者というのは聞こえがいい。
実際には、親指へ仕事を集めすぎているだけかもしれない。
野口整体では、親指の疲れを、親指だけの問題としては観ない。
手首、肘、肩、そして頭まで、一続きのものとして観る。
親指を酷使すると、肘が固くなり、頭や脳の働きにも異常な負担がかかると観る話がある。
親指を使ったから、すぐに脳の病気になるという単純な話ではない。親指だけを身体から切り離して観ることはできない、ということなのだと思う。
野口晴哉は、物を書けなくなった人に肘湯を勧めたという話も伝えられている。
肘を温めて緩めると、止まっていた筆が動き始めたという。
書けないのは、頭の問題だけではない。
肘が固まっていただけかもしれない。
なかなか乱暴な話だが、身体を観るとはそういうことなのだと思う。
頭を使う時、人は頭だけを使っているわけではない。手を使う時も、手だけを使っているわけではない。
肘が固まれば、手先の動きは鈍くなる。手首が固まれば、最後は親指へ仕事が集まる。
反対に、身体全体をうまく使えていない時ほど、親指だけで押すことになる。
最近の僕は、おそらく親指に仕事を集めすぎていた。
身体全体から圧を伝えるところを、親指で押す。手のひらや手根部を使えるところでも、親指を使う。
忙しくなるほど、親指が便利な道具になっていく。
便利なものは酷使される。
人間の職場も、身体の中も大して変わらない。
親指への負担が大きいから、親指だけを緩める。
それでは少し足りない。
手首を緩める。肘に弾力をつける。肩や背中まで観る。
そして、親指や肘、頭へ集めていた仕事を、もう一度身体全体へ返していく。
親指が悪いのではない。
親指に、仕事を集めすぎている。
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