風邪をひくと、多くの人は『早く治したい』『仕事を休めない』と考える。
もちろん、それはそうだ。
熱が出る。
身体が重い。
咳が出る。
鼻水が止まらない。
できれば避けたいし、早く済ませたい。
ただ、整体的に見ると、風邪はただ身体が壊れた状態ではない。
身体が、普段できなかった調整を一気に進めている状態として見ることがある。
日常を『ケ』とするなら、風邪は身体にとっての『ハレ』なのだと思う。
ハレというと、祭りや特別な日を思い浮かべる。
風邪を祭りと言うと、さすがに熱で頭がおかしくなったのかと思われるかもしれない。
だが、身体の中で起きていることを見ると、案外それに近い。
普段の生活では抜けなかった疲れ。
固まった呼吸。
使いすぎた目。
緊張しっぱなしの頭。
溜め込んだ余分なもの。
そういうものを、熱や咳や鼻水を使って一気に動かしている。
身体の中で静かな祭りが起きている。
そう見た方が、風邪というものは分かりやすいことがある。
現代人の風邪は、目と頭から入ることが多い
今の人を見ていると、風邪の前に目と頭がかなり疲れていることが多い。
スマホを見る。
パソコンを見る。
細かい文字を見る。
休憩中まで画面を見る。
人間は本当に画面が好きだ。
もはや目を酷使するために生まれてきたのかと思うくらい、ずっと見ている。
そうすると、目の奥、おでこ、こめかみ、後頭部まで固まってくる。
目の疲れが強い人は、背中の上の方も固くなりやすい。
特に胸椎1番から3番あたりが固まると、呼吸が浅くなる。
息が入らない。
寝ても頭が休まらない。
喉や鼻にすぐ来る。
風邪の時に目までつらくなる。
こういう方は、目と頭の疲れが抜けないまま、風邪に入っていることがある。
風邪の時は、目を休ませる
そこで使いやすいのが、目の蒸しタオルである。
目に熱を入れると、目だけがゆるむわけではない。
おでこ。
鼻の奥。
喉の手前。
首の上。
胸の入り口。
そのあたりまで、ふっとゆるみやすくなる。
目というのは、ただ物を見るためだけのものではない。
頭ともつながる。
呼吸ともつながる。
首や肩ともつながる。
だから、風邪の時に目を休ませることは、頭と呼吸器を休ませることにもつながる。
胸を無理に広げようとしても、目や頭が固いままだと呼吸は深まりにくい。
先に目をゆるめる。
その方が早いことがある。
蒸しタオルのやり方
やり方は難しくない。
フェイスタオルを水で濡らして絞る。
電子レンジで30秒から1分ほど温める。
熱すぎる時は少し振って冷ます。
横になって、たたんだタオルを目からおでこ全体に乗せる。
時間は3分から5分ほどでいい。
『気持ちいいけれど、少し熱い』くらいを目安にする。
ただし、熱すぎるものを我慢する必要はない。
やけどをしてまで整おうとするのは、ただの別件の不調である。
皮膚が弱い人や、目の充血が強い時は無理をしない。
風邪の時は、これに足湯や膝湯を合わせると、目の奥、胸、骨盤まわりが一緒にゆるんでいく感じが出やすい。
風邪は、身体が日常を止めに来る
風邪をひくと、いつものようには動けない。
仕事も家事も、予定通りには進まない。
横になるしかない。
それを邪魔だと見ることもできる。
だが、身体の側からすれば、そこで止める必要があったのかもしれない。
普段なら止まらない。
疲れていても動く。
眠くても見る。
食べすぎても働く。
気を張ったまま過ごす。
そういう日常を、一度強制的に止める。
それが風邪という形で出ることがある。
だから、風邪は身体にとってのハレなのだと思う。
日常ではできなかった大掃除を、身体がまとめてやっている。
熱で古い疲れを燃やす。
咳や鼻水で余分なものを出す。
目や頭の緊張をほどく。
呼吸と姿勢の流れを変える。
そういう時間として受け取ると、風邪の見え方は少し変わる。
風邪の時に、身体にしてあげたいこと
風邪の時に大事なのは、身体の邪魔をしすぎないことだと思う。
無理に動かない。
しっかり横になる。
食べすぎない。
目を休ませる。
足湯や膝湯で要所を温める。
それくらいでいい。
食べなければ治らないと思って、無理に食べる人もいる。
だが、消化に力を取られすぎると、身体は余計に忙しくなる。
風邪の時くらい、身体に仕事を増やさない方がいい。
風邪を敵として叩きつぶすより、身体がやっている調整を少し手伝う。
そのくらいの方が、結果として経過しやすいことがある。
風邪は、身体からの贈り物でもある
風邪や体調不良は、サボりでも失敗でもない。
もちろん、強い症状がある時や不安が大きい時は、医療機関に相談することが大前提である。
ただ、整体的に見るなら、風邪は身体が整い直そうとしている時間でもある。
日常のケを一度止める。
身体の中でハレの時間が始まる。
その時に、目と頭を休める。
呼吸の入り口を温める。
よく眠る。
食べすぎない。
そうして経過した風邪のあとには、身体が軽くなることがある。
肩や首の張り方が変わることもある。
よく眠れるようになることもある。
風邪をひいてしまった、とだけ見るのではなく、身体が整う機会を作ってくれたと見る。
そういう受け取り方もあっていいと思う。
風邪はただ邪魔なものではない。
本来は、有難い働きをしてくれている身体からの贈り物なのだと思う。