手の力を抜く。
肩の力を抜く。
この二つは、何となく分かる。
しかし、肘の力を抜くというのは難しい。
以前、そんな話を聞いたことがある。
手は開けばいい。肩も、一度持ち上げて落とせば、力が抜けた感じは分かりやすい。
ところが肘は、手を目的の場所へ置いておくために、無意識に働き続けている。
手は柔らかい。肩も上がっていない。
それでも、肘の力だけが抜けていないことがある。
最近、僕は親指への負担が大きいと感じていた。
痛いわけではない。ただ、忙しくなって施術の人数が増えると、以前より親指を使っている感じがある。
親指を使いすぎているのだと思っていたが、本当は肘の力が抜けていないのかもしれない。
肘で腕を固め、最後の仕事を親指へ押しつけている。
野口整体には、上肢第五調律点という、肘周辺にある調律点がある。
肘を曲げた時に皺が深く寄るところや、押さえると小指側へ響くところを観る。
上肢第五に偏った疲れがあると、やろうと思っているのに行動へ移れない、と観る話もある。
頭では分かっている。やる気もある。しかし、実際の動きにならない。
なかなか肘に背負わせすぎな話だが、考えてみると面白い。
頭で思ったことを、手の働きへ変える。その途中に肘がある。
肘が固まれば、頭から手へ伝わるものも途中で止まる。
手先は動いていても、どこか力任せになり、最後は親指のような便利なところへ負担が集まってくる。
野口晴哉は、物を書けなくなった人に肘湯を勧めたという話も伝えられている。
頭の中では書きたい。しかし、手が動かない。
そこで頭をどうにかするのではなく、肘を温める。
書けないのは、才能がなくなったからではない。
肘が固まっていただけかもしれない。
肘を緩める方法として、肘湯は使いやすい。
桑谷整体では、洗面器や桶などに少し熱めのお湯を張り、肘から先を7分ほど浸ける方法を勧めている。
湯が冷めてきたら、途中で少し差し湯をして温度を保つ。
肘だけをどうにかしようとするのではなく、前腕から手まで一緒に温める。
そうすると、固まっていた肘や手首、指先まで緩みやすくなる。
施術では、上肢第五調律点を観た後に、肘の小指側を軽く弾くこともある。
強く叩くのではない。固まって鈍くなった肘に、もう一度弾力を思い出させるような感じだ。
手を緩める。肩を緩める。
それでも力が抜けない時は、その間にある肘を観る。
最近の僕は、親指を使いすぎていたのではない。
肘が仕事をやめないまま、最後の仕事を親指へ集めていたのかもしれない。
手も肩も抜けている。
最後まで働いているのは、肘である。
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