僕には霊感がない。
幽霊を見たこともないし、そもそもあまり信じてもいない。
患者さんから、
「人の悪いものをもらったりしないんですか?」
と聞かれることがある。
そんなものは、もらわない。
以前、偉い先生が、
「そんなものをもらうくらいなら、整体師はやめた方がいい。」
というようなことを言っていた。
なかなか厳しい。
でも、実際そうなのだと思う。
施術では、相手にある程度同調することも必要になる。
ただ、共感しすぎると持っていかれる。
相手が痛いから、こちらまで痛くなる。
相手が苦しいから、こちらまで苦しくなる。
それでは一緒に沈んでいるだけだ。
僕たちは、あくまで黒子であるべきなのだと思う。
以前、霊が見える人を長く観察していた方から、そういう人には眠りが浅く、後頭部に特徴が出ていることが多いと聞いたことがある。
本当かどうかは分からない。
ただ、その話を聞いた時に少し面白いと思った。
整体でも、後頭部は睡眠の状態を観る時に使うことがある。
また、本能的な働きと重ねて観ることもある。
そう考えると、まったく関係のない話でもないような気がしてくる。
僕自身、霊を見ることはできない。
それでも、この仕事をしていると、目には見えない何かを感じることはある。
言葉では何も聞いていないのに、何となく身体の状態が分かる。
触れる前から、今日はいつもと違うと感じる。
説明しろと言われると困るけれど、そうとしか言いようのないことはある。
昔の整体の修行には、活元運動や行気を長い時間続けるような、今ではなかなか真似できないものもあったと聞く。
身体や精神を極限まで使い、普段なら拾わないような感覚まで拾えるようにしていったのかもしれない。
一方で、人間は眠りが浅くなったり、極端に疲れたりすれば、普段とは違うものを感じることもある。
だとすれば、そういう感覚は単なる脳の一時的なバグなのかもしれない。
でも逆に、
普段は鈍くて感じ取れていないものを、そういう時だけちゃんと感じられるようになっている可能性だって、完全には否定できない。
幽霊が本当にその辺を漂っているのか。
それとも、疲れた脳が勝手に作っているのか。
僕には確かめようがない。
霊がいるのかどうかも、やっぱり分からない。
ただ、この仕事をしていると、目に見えるものだけを見ていればいいとも思えなくなる。
脳のバグなのか。
本当にそこに何かあるのか。
世の中には、そのくらい曖昧なまま置いておいた方がいいものもあるのかもしれない。