施術をしていると、身体はそこまで悪く見えないのに、どうも落ち着かない人がいる。
呼吸もそこまで浅くない。
姿勢も大きく崩れているわけではない。
それでも、何かが抜けていない。
そういう時、腕の外側を見ることがある。
肘の外側あたり。
手の三里から少し下。
整体でいう上肢第四調律点のあたりである。
ここが固い人は、腕だけの問題では済まないことがある。
肩や首が張る。
背中が抜けない。
頭が休まらない。
胸の奥に何か残っているような感じがする。
そういう出方をすることがある。
上肢第四は、腕の疲れにも関係する。
ただ、それだけではない。
何かを握りしめている人。
手放したつもりでも、まだ身体のどこかで持っている人。
そういう人は、このあたりが妙に固くなっていることがある。
頭ではもう終わったと思っている。
気にしていないつもりでいる。
けれど、身体の方はまだ終わっていない。
人間は本当に面倒である。
自分にも、そういう時期があった。
頭では切り替えたつもりなのに、どうしても思い返してしまうことがあった。
考えないようにしているのに、気づけば同じところを回っている。
そういう時は、決まって腕の外側が張っていた。
右腕の外側が固く、手を使っていても感覚が鈍い。
肩も抜けない。
胸もどこか引っかかる。
そうなってくると、考え事は頭だけの問題ではないのだとよく分かる。
上肢第四のあたりを軽くゆるめていくと、腕の力が抜けてくる。
腕が抜けると、肩が少し下がる。
肩が下がると、胸の奥も少しゆるむ。
胸がゆるむと、息が入りやすくなる。
そうすると、頭の中で同じことを回し続ける感じも、少し静かになることがある。
腕から抜けるものがあるのだと思う。
上肢第四が詰まっている人は、肩こりや首こり、腕のだるさ、頭痛、背中の張りとして出ることがある。
さらに、このあたりは大腸経の流れとも重なるので、消化器の働きとも無関係ではない。
胃もたれ。
便秘。
食欲の波。
胸のつかえ。
そういうものが一緒に出ている人もいる。
食べたものを消化できないように、気持ちの方も消化できずに残ることがある。
身体は、意外と正直である。
自分でできることとしては、肘湯が使いやすい。
熱めのお湯に、肘から先を浸ける。
熱いけれど気持ちいいくらいを目安にする。
時間は5分から7分ほどでいい。
冷めてきたら差し湯をして、温度を保つ。
終わったら、左右の赤みを見る。
赤みが薄い側、温まりにくい側があれば、その側だけ1分から2分ほど追加する。
ただ温めればいいというものではない。
左右差を見る。
温まり方を見る。
身体の反応を見る。
そこが大事である。
湯上がりに軽く腕を回してみると、肩や胸までゆるんでいることがある。
上肢第四を整えるというのは、ただ腕の筋肉をゆるめることではない。
手放せないものを、腕から抜いていくようなところがある。
執着が抜けない時、それを心の問題だけで見ていると外すことがある。
腕で止まっていることもある。
肩で止まっていることもある。
胸で止まっていることもある。
気持ちを変えようとしても変わらない時は、身体のどこかがまだ握っているのかもしれない。
そういう時は、腕からゆるめてみる。
肘を温める。
腕がゆるむ。
肩が下がる。
胸がゆるむ。
息が入る。
その流れの中で、手放せなかったものが少し動き出すことがある。
桑谷整体でも、腕や肘の硬さを、ただ腕だけの問題としては見ない。
肩や首、背中、呼吸、消化器、そしてその人が何を抱えているのか。
そこまで含めて見ることで、身体の見え方は変わってくる。